断絶への航海 1

モテ/非モテ問題を考えると、俺はいつも深い絶望に陥り、最後には決まって考えることをやめてしまいます。それは、何も自分が非モテであるということに対してではなくて、むしろ、そのことがなかなか理解してもらえないということに対して、絶望を覚えるからです。非モテでない人との間に横たわる、どうしようもない断絶…それが一番ツラい。

いわく、「お前は非モテじゃない」「お前の努力が足りない」「お前よりもっと困っているヤツがいる(贅沢を言うな)」などなど。

…違うんです。違うんですよ。俺は何も自分が非モテであることだけを思い悩んでるんじゃあ、ないんです。

むしろ、自分が非モテであることは、ほとんど自己責任/自業自得だとさえ考えているくらいです。もちろん非モテでいることは寂しいですし、できることなら脱却したいとは思っています。

ただ、そもそも非モテとは、認識の問題でもあるわけです。現象としての非モテ、事実としての非モテも、もちろんありますが、それよりも、「自分が自分のことを『非モテ』であると認識し、満たされぬ思いを抱いていること」の方が問題なわけで、客観的にみて明らかにその人が非モテ人であっても、本人が気にしていなければ、あるいは別のことに夢中だとか幸せを見出しているだとかすれば、ほとんど問題にはならないわけです*1

俺は、他者からの承認が得られない、この状態をして「非モテ」と認識しているということなんです。そして俺にとって、非モテの解決とは、モテになることではないんです。それに、一度非モテを経験すると、たとえモテがやって来ようが、それが直接非モテの解決に繋がるとは限らないんです。

少なくとも、俺にとっての非モテとは、「血縁以外での承認が得られない、あるいは血縁すら拒絶される」ということなんです。そして、モテというのは、単に異性が寄って来るというだけの状態です。非モテ解消のチャンスは増えるかもしれませんが、それが即、脱・非モテに繋がるとは思えません。
つまるところ、俺は、分かって欲しいだけなんです…世の人々が当たり前のようにこなしている「恋愛」のステージに立てない人間がいる。それどころか、軽蔑すら受け、差別的待遇に甘んじざるを得ない人間がいる、ということを。でなきゃ、こんなにも自分をさらけ出して、ウザったいだけの「自分語り」を繰り返したりなんかしません。ここにこんなことを書き連ねても、何の解決にもならないことは、充分すぎるほど分かっています。それを承知の上で、俺はみなさんに訴えているんです。

非モテではない全ての人よ、あなた達は恵まれている」

だから何やねん、と思われるかもしれません。でも、そこには歴然とした格差が、そしてその格差に基づく差別が、存在しているということに気付いて欲しい。

「あなたの幸せの足下には、あまたの不幸せが転がっている」

俺は何も、自分がいかに不幸であるかということを訴えているわけではありません。そんな類の不幸自慢なんて、単に逆ベクトルの権威主義に過ぎません。無意味です。そうではなくて、この世には「当たり前の、普通の恋愛」ができない、そこへの参加を認められない「非モテ人」たちがたくさん存在するんだということを知って欲しいのです。

「俺たちは、ここにいる!」

もし、あなたが俺たちのような立場なら、どうします? 何もしていないのに、異性からは嫌悪・軽蔑・拒絶・無視、同性の友達すらまともに作れず、そのためにより一層コンプレックスを強化してしまうという、「負のスパイラル」に陥ってしまったとしたら?

それでもなお、他人に対して「キモい」とか「ウザい」とか、上っ面だけで斬って捨てるようなことができますか?

誰からも承認を得ることができなくても、拒絶され続けても、それでもなお、他者に対し恐怖を抱かずに生きてゆけますか?

あなたも、ひょっとしたら、俺たちのように、非モテになっていたのかも知れないんです。

確かにあなたは悪くありません。でも、あなたが、自分自身の幸せに無自覚なことで、我々非モテ人は傷付きます。自分の幸せを当たり前だと考えたとき、「当たり前」ができない人を馬鹿にする心が芽生えていませんか?

我々非モテ人も、あなたと同じように悪くはありません。様々な環境や条件が重なった結果、こうなってしまっただけなんです。でも、我々非モテ人もまた同じように、あなた達を傷付けているのかもしれません。いえ、少なくとも不快感を与えてしまっていることは確実でしょう。

非モテ人は、それ以外の人たちを責めたりはしません。他人の幸せを邪魔するようなことを望んではいないからです。

だから、対話しましょう。断罪ではなくて。悪者探しをするのではなくて、互いの存在を認め合いたいのです。

*1:電波男で言われている「護身完成」ってのは、つまりそういうことなんだと思います